《 第39話 昨年の覇者 》
お土産を買い、コンテストの受付を済ませたあと。
宿屋に荷物を置き、ちょっと休んでからドラミに告げた。
「コンテストの準備しない?」
「準備ってなにするのだ?」
「本番で着る服を選んだり、アクセサリーを買ったり、髪型を変えてみたり……とにかくオシャレするんだよ」
「べつに買わなくていいのだ。だって、欲しいものはもう買ってもらったのだ~」
オペラグラスで僕の顔を見て、ドラミが言う。
僕に遠慮してるんじゃなく、本気で着の身着のまま出場するつもりみたいだ。
うーん。どうしよ……。いまのままでも可愛いけど、コンテストで優勝できるかはわからないし……。
かといって『オシャレしないと負けるよ』って言えば落ちこませちゃうかも。
それって『オシャレしないと可愛くないよ』って言ってるようなものだから。
となると、ドラミを傷つけないような言い回しでオシャレさせないとだよね。
「オシャレな格好したら、いい思い出になりそうじゃない?」
「……思い出になるのだ?」
「なるよ。せっかくの旅なんだし、普段しないことをしてみるのもいいと思うなぁ」
「一理あるのだ……」
よし。あと一押しだ。
「マリンちゃんにコンテストの話をして、『これがそのときのオシャレグッズ』って見せてあげたら、きっと『す、すごいです……!』って言うと思うよ」
「オシャレしてみるのだ!」
やった!
「そうと決まればさっそくオシャレしよう!」
「するのだ~! ……ところで、オシャレってどうするのだ?」
「えっ? そうだね……」
流行の服はわからないし、オシャレな髪型もわからないし、化粧の技術もない。
ただひとつ確実に言えるのは、服だけはいまのままってことだ。ガーネットさんのお下がり以上の服なんてないんだから。
だったら……
「服屋に行って、その服に合う装飾品を選んでもらおう」
「そうするのだ!」
プロの意見を参考にすることに決め、僕たちは部屋を出た。
宿屋の店主に服屋の場所を聞き、そちらへ向かうと、立派な店があった。
店員もオシャレな格好してるし、これならアドバイスがもらえるはず!
「これっ! これがいいのだ!」
店員を呼ぼうとしたところ、ドラミがネックレスを手に取った。
眼窩に赤い石が埋めこまれた、ドクロのネックレスだ。
可愛いコンテストにドクロのネックレスって合わないんじゃ……。
「どうしてドクロのネックレスがいいの?」
「ドラミが倒した魔獣のドクロかもって思ってもらえるのだ」
見栄を張りたいみたい。
「魔獣の頭蓋骨にしては小さすぎるけど……」
「だったら大きいのを探すのだ! 店員さーん! 店員さーん!」
「はいはーい! いま行きます~!」
ツカツカ! ツカツカ!
小さな女の子がヒールの音を響かせながら歩み寄ってくる。
金髪を縦ロールにした、とってもオシャレな10歳くらいの女の子だ。
「……迷子なのだ?」
「いいえ、店員のデルモです」
「小さいのに働いてて偉いのだ……!」
「ほんとは店員じゃなくて、パパとママのお手伝いをしてるだけです……」
見栄を張ってたみたい。
でも、両親の手伝いをするなんて立派だ。
「ただのお手伝いですけど、わたしでいいですか?」
「もちろんだよ。むしろ普通の店員より、きみのほうがいいよ」
「そ、そうですか?」
照れくさそうなデルモちゃんに、僕はうなずいてみせる。
デルモちゃんはドラミと同い年くらいで、おまけにオシャレだ。
ツヤツヤの爪やサラサラの髪、さっきの歩き方からも美意識の高さがうかがえる。
彼女なら役立つアドバイスをくれるはず。
「この服に合う装飾品を探してるんだけど、ないかな?」
「あと大きいドクロを探してるのだ!」
「ドクロはないですけど、その服に合う装飾品ならあります! こっちです!」
デルモちゃんについていき、ペンダントを紹介される。
「これは去年、コンテストで優勝したときのペンダントです」
「ドクロのほうがカッコイイのだ……」
「でもドラミ、優勝したときのペンダントだってよ。コンテストに出るならこっちのほうがいいんじゃない?」
「えっ。コンテストに出るんですかっ?」
「出るのだ!」
「だったら、わたしみたいにお化粧して、ネイルして、髪もしっかり梳かしたほうがいいですよ」
「ちょっと面倒なのだ……」
せっかくのアドバイスを聞いてもらえず、デルモちゃんは頬を膨らませた。
しかし諦めずに商品を手に取り、
「当店には素敵なクシがいっぱいあります。これとか可愛いですよ。髪を梳かすのが楽しくなりますから!」
「クシ……」
「興味出ましたっ?」
「クシと聞いて、昨日食べた串焼き肉を思い出しただけなのだ。あれは美味しかったのだ……」
「もうっ! ちょっとはまじめに聞きなさいよ! わたし去年1位だったんだから! わたしにアドバイスしてもらえるなんてすごいことなんだから!」
「1位だったのだ!? す、すごいのだ……!」
「そ、それほどでもないわよ……」
デルモちゃんは顔が真っ赤だ。照れくさそうにもじもじしている。
にしても1位かー。どうりでオシャレだと思ったよ。
デルモちゃんは気を取りなおすように咳払いをして、
「コンテストに出るなら、わたしみたいにハイヒールを履くべきね」
「そのクツ、歩きづらそうなのだ……」
「わたしみたいに慣れれば美しく歩けるわ。見てなさい!」
ツカツカ! ツカツカ!
デルモちゃんは優雅にウォーキングしてみせる。
「こうなのだ?」
のっしのっし! のっしのっし!
「美しくないわ。せっかくの可愛さが台無しよ」
「ありがとなのだ! デルモも可愛いのだ~」
「と、当然じゃないっ! 私、美容には気を遣ってるしっ! 今年の1位もわたしで決まりよ!」
「うむ。頑張るといいのだ!」
「……なにその余裕。もしかして、実は名のある出場者なのかしら?」
「ドラミはスンディル王国じゃちょっとした有名人なのだ!」
「どうりでオーラがあるわけだわ……。戦績は?」
「多くの戦場を駆け抜け、無傷で生還し続けたのだ!」
「大会荒らしってわけね……。でも1位の座は譲らないわっ! 優勝して、この店をもっと有名にするんだから!」
「立派なのだ!」
「べつに当然のことだし……パパとママのお手伝いしたいだけだし……」
照れくさそうに頬を染め、髪を指でくるくるする。
「と、とにかく優勝したいならハイヒールが欠かせないわ。これを履くだけで美しい姿勢が手に入るんだから! ちょうどわたしとお揃いのハイヒールがあるから、これ買いなさい!」
優勝を狙ってるのに、ドラミのオシャレに協力してくれるなんて……。
ドラミはハイヒールに興味ないみたいだけど、せっかくの好意を無下にしちゃだめだよね。
「じゃあ一足買おうかな」
「お買い上げありがとうございます!」
そうしてオススメされたハイヒールを買い、僕たちは店を出たのだった。
お土産を買い、コンテストの受付を済ませたあと。
宿屋に荷物を置き、ちょっと休んでからドラミに告げた。
「コンテストの準備しない?」
「準備ってなにするのだ?」
「本番で着る服を選んだり、アクセサリーを買ったり、髪型を変えてみたり……とにかくオシャレするんだよ」
「べつに買わなくていいのだ。だって、欲しいものはもう買ってもらったのだ~」
オペラグラスで僕の顔を見て、ドラミが言う。
僕に遠慮してるんじゃなく、本気で着の身着のまま出場するつもりみたいだ。
うーん。どうしよ……。いまのままでも可愛いけど、コンテストで優勝できるかはわからないし……。
かといって『オシャレしないと負けるよ』って言えば落ちこませちゃうかも。
それって『オシャレしないと可愛くないよ』って言ってるようなものだから。
となると、ドラミを傷つけないような言い回しでオシャレさせないとだよね。
「オシャレな格好したら、いい思い出になりそうじゃない?」
「……思い出になるのだ?」
「なるよ。せっかくの旅なんだし、普段しないことをしてみるのもいいと思うなぁ」
「一理あるのだ……」
よし。あと一押しだ。
「マリンちゃんにコンテストの話をして、『これがそのときのオシャレグッズ』って見せてあげたら、きっと『す、すごいです……!』って言うと思うよ」
「オシャレしてみるのだ!」
やった!
「そうと決まればさっそくオシャレしよう!」
「するのだ~! ……ところで、オシャレってどうするのだ?」
「えっ? そうだね……」
流行の服はわからないし、オシャレな髪型もわからないし、化粧の技術もない。
ただひとつ確実に言えるのは、服だけはいまのままってことだ。ガーネットさんのお下がり以上の服なんてないんだから。
だったら……
「服屋に行って、その服に合う装飾品を選んでもらおう」
「そうするのだ!」
プロの意見を参考にすることに決め、僕たちは部屋を出た。
宿屋の店主に服屋の場所を聞き、そちらへ向かうと、立派な店があった。
店員もオシャレな格好してるし、これならアドバイスがもらえるはず!
「これっ! これがいいのだ!」
店員を呼ぼうとしたところ、ドラミがネックレスを手に取った。
眼窩に赤い石が埋めこまれた、ドクロのネックレスだ。
可愛いコンテストにドクロのネックレスって合わないんじゃ……。
「どうしてドクロのネックレスがいいの?」
「ドラミが倒した魔獣のドクロかもって思ってもらえるのだ」
見栄を張りたいみたい。
「魔獣の頭蓋骨にしては小さすぎるけど……」
「だったら大きいのを探すのだ! 店員さーん! 店員さーん!」
「はいはーい! いま行きます~!」
ツカツカ! ツカツカ!
小さな女の子がヒールの音を響かせながら歩み寄ってくる。
金髪を縦ロールにした、とってもオシャレな10歳くらいの女の子だ。
「……迷子なのだ?」
「いいえ、店員のデルモです」
「小さいのに働いてて偉いのだ……!」
「ほんとは店員じゃなくて、パパとママのお手伝いをしてるだけです……」
見栄を張ってたみたい。
でも、両親の手伝いをするなんて立派だ。
「ただのお手伝いですけど、わたしでいいですか?」
「もちろんだよ。むしろ普通の店員より、きみのほうがいいよ」
「そ、そうですか?」
照れくさそうなデルモちゃんに、僕はうなずいてみせる。
デルモちゃんはドラミと同い年くらいで、おまけにオシャレだ。
ツヤツヤの爪やサラサラの髪、さっきの歩き方からも美意識の高さがうかがえる。
彼女なら役立つアドバイスをくれるはず。
「この服に合う装飾品を探してるんだけど、ないかな?」
「あと大きいドクロを探してるのだ!」
「ドクロはないですけど、その服に合う装飾品ならあります! こっちです!」
デルモちゃんについていき、ペンダントを紹介される。
「これは去年、コンテストで優勝したときのペンダントです」
「ドクロのほうがカッコイイのだ……」
「でもドラミ、優勝したときのペンダントだってよ。コンテストに出るならこっちのほうがいいんじゃない?」
「えっ。コンテストに出るんですかっ?」
「出るのだ!」
「だったら、わたしみたいにお化粧して、ネイルして、髪もしっかり梳かしたほうがいいですよ」
「ちょっと面倒なのだ……」
せっかくのアドバイスを聞いてもらえず、デルモちゃんは頬を膨らませた。
しかし諦めずに商品を手に取り、
「当店には素敵なクシがいっぱいあります。これとか可愛いですよ。髪を梳かすのが楽しくなりますから!」
「クシ……」
「興味出ましたっ?」
「クシと聞いて、昨日食べた串焼き肉を思い出しただけなのだ。あれは美味しかったのだ……」
「もうっ! ちょっとはまじめに聞きなさいよ! わたし去年1位だったんだから! わたしにアドバイスしてもらえるなんてすごいことなんだから!」
「1位だったのだ!? す、すごいのだ……!」
「そ、それほどでもないわよ……」
デルモちゃんは顔が真っ赤だ。照れくさそうにもじもじしている。
にしても1位かー。どうりでオシャレだと思ったよ。
デルモちゃんは気を取りなおすように咳払いをして、
「コンテストに出るなら、わたしみたいにハイヒールを履くべきね」
「そのクツ、歩きづらそうなのだ……」
「わたしみたいに慣れれば美しく歩けるわ。見てなさい!」
ツカツカ! ツカツカ!
デルモちゃんは優雅にウォーキングしてみせる。
「こうなのだ?」
のっしのっし! のっしのっし!
「美しくないわ。せっかくの可愛さが台無しよ」
「ありがとなのだ! デルモも可愛いのだ~」
「と、当然じゃないっ! 私、美容には気を遣ってるしっ! 今年の1位もわたしで決まりよ!」
「うむ。頑張るといいのだ!」
「……なにその余裕。もしかして、実は名のある出場者なのかしら?」
「ドラミはスンディル王国じゃちょっとした有名人なのだ!」
「どうりでオーラがあるわけだわ……。戦績は?」
「多くの戦場を駆け抜け、無傷で生還し続けたのだ!」
「大会荒らしってわけね……。でも1位の座は譲らないわっ! 優勝して、この店をもっと有名にするんだから!」
「立派なのだ!」
「べつに当然のことだし……パパとママのお手伝いしたいだけだし……」
照れくさそうに頬を染め、髪を指でくるくるする。
「と、とにかく優勝したいならハイヒールが欠かせないわ。これを履くだけで美しい姿勢が手に入るんだから! ちょうどわたしとお揃いのハイヒールがあるから、これ買いなさい!」
優勝を狙ってるのに、ドラミのオシャレに協力してくれるなんて……。
ドラミはハイヒールに興味ないみたいだけど、せっかくの好意を無下にしちゃだめだよね。
「じゃあ一足買おうかな」
「お買い上げありがとうございます!」
そうしてオススメされたハイヒールを買い、僕たちは店を出たのだった。
