買い取った中古品を紅炎の散策号に積み込み終えると、アグドラファンの郊外で見つけた例のダンジョンの前にきていた。
「紅炎の散策号って、こんな大きな荷馬車なのに、悪路でも車輪がとられないんですね」
「車輪の幅が通常の荷馬車に使う五倍ほど広くしてあるからね。おかげで木じゃ強度が足りないし、鉄じゃ重すぎるとなって、軽量で強度もあって衝撃にも強いミスリル鋼を大量に使うはめになったが」
ここにくるまで街道を外れた悪路を走ってきたが、巨大な荷馬車を二台連結した紅炎の散策号は、その悪路をものともせずに一〇頭立てのパワーを生かして走破していた。
宿泊設備も整ってて、移動型の拠点みたいに使えるし、冒険者として色々な場所に行くなら僕もお金を貯めて同じようなのを持ちたいなぁ。
さすがにいつまでもベルンハルトさんのベッドを占領するわけにもいかないし、ある程度お金が貯まったら小さな荷馬車でも手に入れよう。
「わたしはお金かけすぎっていつも言ってるんだけどね。紅炎の散策号はベルちゃんの趣味みたいなものだから。ああ、でも内装はわたしの領分の趣味だからね」
ヴァネッサさんが少し呆れ気味の顔をしてるけど、彼女も彼女で紅炎の散策号に愛着があるらしい。
「ロルフ君、お金が貯まったら、絶対に自分たちの荷馬車を買おうね。移動がものすごく楽になるし、街でリズィーが泊まる場所にも困らないと思う」
「たしかにリズィーを泊めてくれる宿は少なそうだしね。そのためにはお金を稼がないといけないですし、お仕事を始めるとしましょう。ベルンハルトさん、入口はこっちになってます」
紅炎の散策号の施錠を終えたベルンハルトさんたちを連れ、地面を抉った時にダンジョンへ繋がった場所へ行く。
ランタンに明かりを灯すと、例の水没している場所がある部屋にまで移動した。
「ほぅ、ここが水没してる部屋か。エルサ君の破壊スキルがなければ見つからなかった部屋ということだが。たしかにここへ到達する道は、あの水没している場所からしかなさそうだ」
ここにくるまでの通路は、ベルンハルトさんとヴァネッサさんがくまなく再調査をしてくれて、特に隠し扉や隠し部屋がないことは判明していた。
「私とヴァネッサで水没しているところの調査をしてくるので、ロルフ君たちはここで魔結晶の吸収でもして時間を潰しておいてくれたまえ。我々に何かあった時はこれで知らせるので、その時は命綱を一気に引いてくれ」
身体に縄を付けたベルンハルトさんが、耳に付けている小さなイヤリングと同じ物を手渡してくる。
「これを付けておけば、距離が離れてても話ができるからな。ロルフ君に預けておく」
「分かりました。何か起きたときはすぐに言ってください」
「ああ、そうする。だが、何か起きない方がいいがね。ヴァネッサ、水中呼吸の魔法を頼む」
「はいはい、すぐにやるわよ」
ヴァネッサさんが杖を手に詠唱をすると、二人は泡みたいな薄い膜に包まれていた。
膜に包まれた二人は、ゆっくりと水没した水面の奥に消えていく。
「行っちゃったね。二人とも大丈夫かな?」
「ベルンハルトさんたちは、いくつものダンジョンを調査してきた人だし、危ない時はこのイヤリング型の魔導具で僕たちに伝えてくるんで大丈夫ですよ。命綱が途切れないように足していくのだけは気を付けないといけないですから、近くで魔結晶の吸収をしましょう」
「おっけ、じゃあここでやろっか」
僕は継ぎ足し用の縄を持ったエルサさんの隣に腰を下ろす。
それから二人の命綱を継ぎ足す作業をしつつ、持ち込んだクズ魔結晶の吸収をしていくことにした。
クズの魔結晶をエルサさんに破壊してもらい、次々に経験値として吸収していく。
仕入れたクズ魔結晶は三〇〇〇個ほどあるため、なかなか数は減っていかなかった。
────────────────────
>【再生】スキルがLVアップしました。
>LV9→10
>解放:☆の成功率1%上昇
>解放:数量指定Ⅰが解放されました。
────────────────────
スキルステータス
パッシブスキル:☆成功率上昇9%上昇
アクティブスキル:☆素材合成 数量指定Ⅰ
――――――――――――――――――――
LVアップで、数量指定というスキルが解放されたみたいだ。
解放された瞬間、エルサさんが破壊した魔結晶の上に数字が浮かび上がるのが見えた。
何の数字かな? 今は『1』だけど、こっちが数字を意識すれば変わるんだろうか?
破壊された魔結晶の上に浮かんだ数字を見ながら、『20』を意識すると数字が切り替わっていた。
変わった!? でも何の意味が?
数字が変わったあと、エルサさんが魔結晶に対し破壊スキルを行使しようとすると、勝手にクズ魔結晶が二〇個分、袋から飛び出し同じように破壊された状態になっていた。
「ちょ!? なんで勝手に破壊されたの!?」
急に袋から魔結晶が飛び出し、破壊されて宙に浮いているのを見たエルサさんが驚いていた。
「た、たぶん。僕の再生スキルが成長した影響で、エルサさんの破壊スキルの力も拡張されたようでして……。今さっき、『数量指定Ⅰ』というスキルが解放され、破壊対象物を任意の数で一度に破壊できるようになったみたいです」
破壊されて宙に浮いていた魔結晶に触れ吸収を選択すると、数量分全てが一気に吸収される。
「しかも、吸収は指定した数が一気にできる感じですね」
「それって、たくさんの魔結晶を一気に破壊して吸収できるってこと?」
「たぶん。それ以外にもたくさん素材化したい物を一気に素材にできるスキルかと思います」
「ああ、土とか草とかいっぱい使いそうなやつ?」
「ですね。ただ、どれくらいの範囲で有効なのかは不明ですけど」
「それは二人が戻ってきた後で試したみた方がいいかも。ある程度の範囲を一気に破壊できるなら穴とかも簡単に掘れそうだし、伐採もできそう」
そういった作業の効率化ができるスキルなのかもしれないな。
一個ずつスキルを発動させるのも面倒な時もあるし。
新たに得たスキルを使い、まだ大量に残っているクズ魔結晶を吸収することにした。
「紅炎の散策号って、こんな大きな荷馬車なのに、悪路でも車輪がとられないんですね」
「車輪の幅が通常の荷馬車に使う五倍ほど広くしてあるからね。おかげで木じゃ強度が足りないし、鉄じゃ重すぎるとなって、軽量で強度もあって衝撃にも強いミスリル鋼を大量に使うはめになったが」
ここにくるまで街道を外れた悪路を走ってきたが、巨大な荷馬車を二台連結した紅炎の散策号は、その悪路をものともせずに一〇頭立てのパワーを生かして走破していた。
宿泊設備も整ってて、移動型の拠点みたいに使えるし、冒険者として色々な場所に行くなら僕もお金を貯めて同じようなのを持ちたいなぁ。
さすがにいつまでもベルンハルトさんのベッドを占領するわけにもいかないし、ある程度お金が貯まったら小さな荷馬車でも手に入れよう。
「わたしはお金かけすぎっていつも言ってるんだけどね。紅炎の散策号はベルちゃんの趣味みたいなものだから。ああ、でも内装はわたしの領分の趣味だからね」
ヴァネッサさんが少し呆れ気味の顔をしてるけど、彼女も彼女で紅炎の散策号に愛着があるらしい。
「ロルフ君、お金が貯まったら、絶対に自分たちの荷馬車を買おうね。移動がものすごく楽になるし、街でリズィーが泊まる場所にも困らないと思う」
「たしかにリズィーを泊めてくれる宿は少なそうだしね。そのためにはお金を稼がないといけないですし、お仕事を始めるとしましょう。ベルンハルトさん、入口はこっちになってます」
紅炎の散策号の施錠を終えたベルンハルトさんたちを連れ、地面を抉った時にダンジョンへ繋がった場所へ行く。
ランタンに明かりを灯すと、例の水没している場所がある部屋にまで移動した。
「ほぅ、ここが水没してる部屋か。エルサ君の破壊スキルがなければ見つからなかった部屋ということだが。たしかにここへ到達する道は、あの水没している場所からしかなさそうだ」
ここにくるまでの通路は、ベルンハルトさんとヴァネッサさんがくまなく再調査をしてくれて、特に隠し扉や隠し部屋がないことは判明していた。
「私とヴァネッサで水没しているところの調査をしてくるので、ロルフ君たちはここで魔結晶の吸収でもして時間を潰しておいてくれたまえ。我々に何かあった時はこれで知らせるので、その時は命綱を一気に引いてくれ」
身体に縄を付けたベルンハルトさんが、耳に付けている小さなイヤリングと同じ物を手渡してくる。
「これを付けておけば、距離が離れてても話ができるからな。ロルフ君に預けておく」
「分かりました。何か起きたときはすぐに言ってください」
「ああ、そうする。だが、何か起きない方がいいがね。ヴァネッサ、水中呼吸の魔法を頼む」
「はいはい、すぐにやるわよ」
ヴァネッサさんが杖を手に詠唱をすると、二人は泡みたいな薄い膜に包まれていた。
膜に包まれた二人は、ゆっくりと水没した水面の奥に消えていく。
「行っちゃったね。二人とも大丈夫かな?」
「ベルンハルトさんたちは、いくつものダンジョンを調査してきた人だし、危ない時はこのイヤリング型の魔導具で僕たちに伝えてくるんで大丈夫ですよ。命綱が途切れないように足していくのだけは気を付けないといけないですから、近くで魔結晶の吸収をしましょう」
「おっけ、じゃあここでやろっか」
僕は継ぎ足し用の縄を持ったエルサさんの隣に腰を下ろす。
それから二人の命綱を継ぎ足す作業をしつつ、持ち込んだクズ魔結晶の吸収をしていくことにした。
クズの魔結晶をエルサさんに破壊してもらい、次々に経験値として吸収していく。
仕入れたクズ魔結晶は三〇〇〇個ほどあるため、なかなか数は減っていかなかった。
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>【再生】スキルがLVアップしました。
>LV9→10
>解放:☆の成功率1%上昇
>解放:数量指定Ⅰが解放されました。
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スキルステータス
パッシブスキル:☆成功率上昇9%上昇
アクティブスキル:☆素材合成 数量指定Ⅰ
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LVアップで、数量指定というスキルが解放されたみたいだ。
解放された瞬間、エルサさんが破壊した魔結晶の上に数字が浮かび上がるのが見えた。
何の数字かな? 今は『1』だけど、こっちが数字を意識すれば変わるんだろうか?
破壊された魔結晶の上に浮かんだ数字を見ながら、『20』を意識すると数字が切り替わっていた。
変わった!? でも何の意味が?
数字が変わったあと、エルサさんが魔結晶に対し破壊スキルを行使しようとすると、勝手にクズ魔結晶が二〇個分、袋から飛び出し同じように破壊された状態になっていた。
「ちょ!? なんで勝手に破壊されたの!?」
急に袋から魔結晶が飛び出し、破壊されて宙に浮いているのを見たエルサさんが驚いていた。
「た、たぶん。僕の再生スキルが成長した影響で、エルサさんの破壊スキルの力も拡張されたようでして……。今さっき、『数量指定Ⅰ』というスキルが解放され、破壊対象物を任意の数で一度に破壊できるようになったみたいです」
破壊されて宙に浮いていた魔結晶に触れ吸収を選択すると、数量分全てが一気に吸収される。
「しかも、吸収は指定した数が一気にできる感じですね」
「それって、たくさんの魔結晶を一気に破壊して吸収できるってこと?」
「たぶん。それ以外にもたくさん素材化したい物を一気に素材にできるスキルかと思います」
「ああ、土とか草とかいっぱい使いそうなやつ?」
「ですね。ただ、どれくらいの範囲で有効なのかは不明ですけど」
「それは二人が戻ってきた後で試したみた方がいいかも。ある程度の範囲を一気に破壊できるなら穴とかも簡単に掘れそうだし、伐採もできそう」
そういった作業の効率化ができるスキルなのかもしれないな。
一個ずつスキルを発動させるのも面倒な時もあるし。
新たに得たスキルを使い、まだ大量に残っているクズ魔結晶を吸収することにした。