祭壇の罠を無事にくぐり抜けた僕たちは、元の通路に戻ると、更に先に進んでいく。
やがて、通路は突き当りとなって終わっていた。
「行き止まりみたいですね」
「うん、みたい。でもさ、一本道で行き止まりっておかしいと思わない?」
エルサさんは行き止まりになっている壁に、たいまつを近づけて隅々まで確認をしていく。
エルサさんが壁を調べているのを一緒に眺めていたら、気になる場所が一つ見つかった。
あそこの石だけ何か材質が違うような気が。
僅かに擦れた痕がある。
気になった箇所に、自分のたいまつを近づけて詳しく確認していく。
「どうしたの? ロルフ君?」
「ちょっと気になる箇所があって、ここなんですが色が違うんですよ。それにその周囲に擦れた痕が僅かにあるんで、もしかしたら何かあるのかなと思って」
色が僅かに違う場所を触っていると、擦れた痕に沿って表面の石が動き、何もなかった壁に何かを差し込むような穴が現れた。
「動いた! 何かをはめ込む穴みたいだけど……。大きさから見て鍵って感じじゃないよね?」
さっきの祭壇にあった部屋で手に入れた赤い石が、壁にできた穴にはまるかも。
大きさ的には同じくらいの物だし。
ポーチにしまい込んでいた赤い石を出すと、できた穴にはめこんでみる。
「ピッタリみたい」
「ですね。ここにはめる物だったのかも――」
穴にはまった石が光りはじめると、行き止まりだった壁が上に向かって動き始め、奥に新たな空間が広がった。
「仕掛け扉だった! すごい、こんな扉もあるんだ!」
「相当手の込んだ仕掛けですね。こんなのあまりないと思いますけど」
行き止まりだった壁がなくなり、奥に広がる空間へ注意深く進んでいく。
中は先ほどの祭壇の部屋よりも広く、部屋の中央には巨大な石像が一つ立っていた。
「かなり大きな石像ですね……」
「犬? いや隣の少女からの対比だと、隣のは狼かな?」
「狼……ああ、そう言えばそんな感じに見えなくもないですね。でも、なんでこんなところに石像があるんでしょうか……」
「かなり立派な石像だし、このダンジョンってもしかしたら地下神殿だったとかじゃない? 神様とかの」
「神様か……。でも、狼を連れた少女神なんて聞いたことないですけど。ドワイリス様の若い頃という感じでもありませんし」
この世界で神様と言ったら、人類とスキルを創造し、大いなる獣を倒して世界を作ったドワイリス様しかいないはず。
創造の女神ドワイリスは、世界を創り出すため世界を闇に包んでいた大いなる獣と、その獣の眷属である魔物に対し、自ら光で作り出した眷属である人類にスキルを与え率い戦い続け、最後に大いなる獣を倒し、世界を光で満たしたと教えられていた。
ただ、戦いに勝ったドワイリス様も無傷ではなく、深い傷を負われ人類に世界を任せると、天なる国に傷を癒しに戻られ、煌々と輝いた光の力は弱まり、倒された大いなる獣の死骸から出た闇が世界に夜の時を作り出したとも言われている。
だから、夜は魔物が活発化する時間帯であるし、闇に閉ざされることが多い場所は大いなる獣の力が溜まりやすく、溜まりすぎるとダンジョン化して魔物が徘徊するようになると教えられた。
けど、目の前の石像は、レアスキルの聞き取りのため呼ばれた神殿で見たドワイリス様とは、似ても似つかない顔をしている。
着ている服装や装飾品は瓜二つなんだけど、勇ましさを感じさせるドワイリス様とは違い、優し気な顔付きをしてるんだよな。
「神様の神殿というよりも、昔この辺に勢力を築いた有力者のお墓かもしれませんよ。そういった墓所は闇の力が溜まりやすくて、ダンジョン化しやすいって聞いたこともあるし」
「お墓かー。さっきのスケルトンたちも元は人間だったということ?」
「たぶん。亡くなって埋葬された人がダンジョン化の影響でスケルトンになっていたのかと。水没して出入口がなくなり、墓参りに来る人が途絶えて、闇が溜まりダンジョン化したとか考える方が自然かも」
立派な造りをした巨大な石像を見上げながら、この場所ができた理由を考えていると、エルサさんが手袋をしたまま石像に触れていた。
「ロルフ君!? あたしの手袋が急に光り出した!?」
謎の少女像を触れていたエルサさんの白い手袋が、急に眩しい光を発し始めていた。
「どうしてこんなことに!?」
「わ、分からない! 急に光り出したから!」
手袋の光は強さを増していき、暗闇に包まれていた部屋の中は真っ白な光に塗りつぶされていく。
やがて光がおさまると、目の前にあった少女の石像は姿を消しており、石像があった場所には血だらけで横たわる漆黒の毛並みをした子犬が現れていた。
やがて、通路は突き当りとなって終わっていた。
「行き止まりみたいですね」
「うん、みたい。でもさ、一本道で行き止まりっておかしいと思わない?」
エルサさんは行き止まりになっている壁に、たいまつを近づけて隅々まで確認をしていく。
エルサさんが壁を調べているのを一緒に眺めていたら、気になる場所が一つ見つかった。
あそこの石だけ何か材質が違うような気が。
僅かに擦れた痕がある。
気になった箇所に、自分のたいまつを近づけて詳しく確認していく。
「どうしたの? ロルフ君?」
「ちょっと気になる箇所があって、ここなんですが色が違うんですよ。それにその周囲に擦れた痕が僅かにあるんで、もしかしたら何かあるのかなと思って」
色が僅かに違う場所を触っていると、擦れた痕に沿って表面の石が動き、何もなかった壁に何かを差し込むような穴が現れた。
「動いた! 何かをはめ込む穴みたいだけど……。大きさから見て鍵って感じじゃないよね?」
さっきの祭壇にあった部屋で手に入れた赤い石が、壁にできた穴にはまるかも。
大きさ的には同じくらいの物だし。
ポーチにしまい込んでいた赤い石を出すと、できた穴にはめこんでみる。
「ピッタリみたい」
「ですね。ここにはめる物だったのかも――」
穴にはまった石が光りはじめると、行き止まりだった壁が上に向かって動き始め、奥に新たな空間が広がった。
「仕掛け扉だった! すごい、こんな扉もあるんだ!」
「相当手の込んだ仕掛けですね。こんなのあまりないと思いますけど」
行き止まりだった壁がなくなり、奥に広がる空間へ注意深く進んでいく。
中は先ほどの祭壇の部屋よりも広く、部屋の中央には巨大な石像が一つ立っていた。
「かなり大きな石像ですね……」
「犬? いや隣の少女からの対比だと、隣のは狼かな?」
「狼……ああ、そう言えばそんな感じに見えなくもないですね。でも、なんでこんなところに石像があるんでしょうか……」
「かなり立派な石像だし、このダンジョンってもしかしたら地下神殿だったとかじゃない? 神様とかの」
「神様か……。でも、狼を連れた少女神なんて聞いたことないですけど。ドワイリス様の若い頃という感じでもありませんし」
この世界で神様と言ったら、人類とスキルを創造し、大いなる獣を倒して世界を作ったドワイリス様しかいないはず。
創造の女神ドワイリスは、世界を創り出すため世界を闇に包んでいた大いなる獣と、その獣の眷属である魔物に対し、自ら光で作り出した眷属である人類にスキルを与え率い戦い続け、最後に大いなる獣を倒し、世界を光で満たしたと教えられていた。
ただ、戦いに勝ったドワイリス様も無傷ではなく、深い傷を負われ人類に世界を任せると、天なる国に傷を癒しに戻られ、煌々と輝いた光の力は弱まり、倒された大いなる獣の死骸から出た闇が世界に夜の時を作り出したとも言われている。
だから、夜は魔物が活発化する時間帯であるし、闇に閉ざされることが多い場所は大いなる獣の力が溜まりやすく、溜まりすぎるとダンジョン化して魔物が徘徊するようになると教えられた。
けど、目の前の石像は、レアスキルの聞き取りのため呼ばれた神殿で見たドワイリス様とは、似ても似つかない顔をしている。
着ている服装や装飾品は瓜二つなんだけど、勇ましさを感じさせるドワイリス様とは違い、優し気な顔付きをしてるんだよな。
「神様の神殿というよりも、昔この辺に勢力を築いた有力者のお墓かもしれませんよ。そういった墓所は闇の力が溜まりやすくて、ダンジョン化しやすいって聞いたこともあるし」
「お墓かー。さっきのスケルトンたちも元は人間だったということ?」
「たぶん。亡くなって埋葬された人がダンジョン化の影響でスケルトンになっていたのかと。水没して出入口がなくなり、墓参りに来る人が途絶えて、闇が溜まりダンジョン化したとか考える方が自然かも」
立派な造りをした巨大な石像を見上げながら、この場所ができた理由を考えていると、エルサさんが手袋をしたまま石像に触れていた。
「ロルフ君!? あたしの手袋が急に光り出した!?」
謎の少女像を触れていたエルサさんの白い手袋が、急に眩しい光を発し始めていた。
「どうしてこんなことに!?」
「わ、分からない! 急に光り出したから!」
手袋の光は強さを増していき、暗闇に包まれていた部屋の中は真っ白な光に塗りつぶされていく。
やがて光がおさまると、目の前にあった少女の石像は姿を消しており、石像があった場所には血だらけで横たわる漆黒の毛並みをした子犬が現れていた。