見上げた先にある看板には、たしかに『D-HAL』の文字。

 私がいつも、学校から駅まで自転車を漕ぐときに通る道にあった。店名に既視感があるのもうなずける。

 ひっそりした雰囲気の、隠れ家的名店という印象を受けた。

 入口の前に設置されているブラックボードには、整った文字でメニューとその値段が書かれている。価格もリーズナブルだった。

 いくつかランチメニューの写真も貼ってある。料理の腕がいいのか写真の腕がいいのかはわからないが、非常に美味しそうに見える。

「ここで仙田くんと会うの?」

 帰り道にいつも目に入るとはいえ、入店はおろか、立ち止まってきちんと見たのも初めてだった。

 カフェといえば、お洒落な人が行くところという漠然としたイメージがあって、私が入るには不相応な気がしていた。

「そうだな。とりあえず中に入ろう」

 弓槻くんが手動のドアを開け、入店する。
 私もそれに続くと、客の来店を知らせるベルが鳴った。