「ご協力、ありがとうございます。あの、大会頑張ってください」
頭を下げて、私もその場から去ろうとしたとき、燈麻実律から呼び止められた。
「あ、鳴瀬さん!」
少し緊張しているような表情。
「はい」
なんだろう。
「良かったら連絡先交換しない? その黒猫のことについて、見かけたりしたらすぐ連絡できるように」
燈麻実律は床に置かれていたスマートフォンを持ち上げて、爽やかに微笑んだ。
「え? ああ、えっと……じゃあ、お願いします」
ここで断るのも変だと思い、私もスマートフォンを出して応じた。
燈麻実律が二人に何か言われているのを尻目に、体育館を出る。
そういえば弓槻くんは、與くんのときみたく、燈麻実律の連絡先は聞いていない。なぜだろうと疑問に思ったけれど、きっと何か理由があるのだろう。
体育館の近くのベンチで、冷たいお茶を飲みながら弓槻くんと話をする。
「どうだ?」
燈麻実律には何か運命のようなものを感じたのか? という意味の問いだ。
「イケメンだけど……特に何も」
「呼び止められていたな」
「ああ、連絡先の交換をしたの。何かあったら教えてくれるって」
「燈麻実律は君のことが好きなのかもしれないな」
「へっ⁉」
予想外のコメントに、そんな情けない声が出てしまう。