「ありがとうございます。いくつか、質問に答えて欲しくてですね――」
説明しようとする私の前に、ずいっ、と弓槻くんが割り込んでくる。
「オカルト研究同好会会長の弓槻だ」
弓槻くんは燈麻実律の隣にしゃがみこむ。私も倣って、その隣に腰を下ろした。座っている状態でも、燈麻くんの身長が高いことがわかる。さすがバレー部。
「さっそくだが、猫は好きか?」
弓槻くんが脇に挟んでいたタブレットを構えて、質問をする。
「猫? 猫はずっと昔から飼ってて、好きだけど……。それがどうかしたの?」
やはり與くんと同じように、質問の意図が気になるようだ。
「それは危ないな。最近この学校の周辺で、霊力の高い黒猫が出没している。そいつは、猫好きに取り憑いて悪事を働く可能性がある。見かけても近寄らない方がいい」
佐伯と鮎川、そして燈麻の三人は顔を見合わせる。こいつらは何を言っているのだろう、みたいな感じで。
「なんだか凄そうなことやってるな。さすが、オカルト研究同好会。俺たちももうすぐ大会だからな。取り憑かれないように気をつけるよ」
不審がってはいたものの、はっきりと否定的な態度をとることはなく、無難に答えてくれた。
「ああ。せいぜい注意してくれたまえ」
弓槻くんは立ち上がってそう言ったあと、クルッとターンをキメてその場から去る。
とても様になっていて、演劇部に入った方がいいんじゃないかと思えた。