「そうなんだ。猫は死ぬ前に姿を消すそうじゃないか」

「そんな、縁起でもないこと言わないで! きっと、元の飼い主に見つかって、連れ戻されたんだよ。ほら、チョコって名前があるくらいだしさ」

 そんな憶測が気休めにしかならないことくらい、私もわかっている。

「だといいんだがな……」

 宙をさまよった視線が、彼の憂いを物語っていた。
 いつも通り、無表情といえば無表情なのだが、ほんの少しだけ影があるように思える。

「さて、調査を始めよう。二人目は燈麻(とうま)実律(みのり)だ」

 タブレットを操作しながら言った彼は、不安な気持ちを無理やり抑え込んでいるようにも見えた。

 燈麻実律。一年生のときに同じクラスだった背の高いイケメンの男子。

 部活はたしか……。

「バレー部は今日は体育館で活動だそうだ。行くぞ」

 そうだ、バレー部。全校集会のとき、二年生で唯一のレギュラーとして表彰されてたような気がする。突き指をした月守風香の記憶を思い出し、反射的に右手の中指を左手で握った。