「今の状態だと、可能性は無数に存在してしまう。当てずっぽうの推測は危険だ。正しい結果を得ることの妨げになりうる。だが、何かヒントになるかもしれない。今感じた疑問を念頭に置いて、これからの調査を進めていこう」

 疑問点は明確にするが、深く考えすぎない。

 慎重でありながら、行動と思考を適切なバランスで両立させる。

 少ないヒントも見逃すまいとする彼のその鋭い眼差しが、ものすごく頼りになるものだということを、私はもう知っているから。

「うん」

 力強く、そう応える。

 弓槻くんは私にとって、羅針盤のような存在だ。
 彼なしには、シロちゃんの生まれ変わりの正体は判明しないだろう。

「少し確認したいことがある。待っててくれ」

 昼食を終えた弓槻くんが立ち上がり、部室の奥へ歩いていく。数秒で戻って来た彼の肩が、少し落ちていたように見えた。

「もしかして、チョコ、今日も来てないの?」

 戻って来た弓槻くんに問いかける。
 話している最中、弓槻くんがしきりに後ろを向いて、部室の奥の方を気にしているのを先ほどから感じていた。