「何が……あったの?」

 わたしは彼に尋ねる。

「トンネルが……崩れたみたい」

 シロちゃんが苦しそうに言葉を発する。

 トンネル……。そこから、芋づる式に記憶が掘り起こされていく。

 その日は、修学旅行の初日だった。京都までの道のりを、バスに乗って移動していた。

 車内で、シロちゃんの肩に頭を乗せて眠ってしまっていたわたしは、大きな音と激しい揺れを感じて目を覚ましたのだ。

 次の瞬間、目まぐるしく世界が回転した。

 何かが崩れ落ちる音を聞いて、体に衝撃を受けた。

 そして痛みを感じる間もなく、気を失った。

 再び意識を取り戻したわたしが見たのは、この悲惨な光景だった。

「いっ……」

 シロちゃんが苦しそうに顔を歪める。

「シロちゃん……」

 わたしとシロちゃんは、付き合っていた。

 それだけでなく、将来を誓い合ってもいた。

 中学生同士の交際なんて、破局を迎える場合がほとんどである。

 しかし、わたしたちは確信していた。

 二人がお互いに、一生を共にする覚悟があるということを。

 中学生にありがちな、彼氏、彼女の存在をステータスと考えているような、恋愛ごっこではなかった。

 わたしたちは、お互いに本気で想い合っていたのだ。

 理屈では説明できない何かが、強く強く、わたしたちを繋いでいた。