「そうだ。猫が苦手かどうかも聞き出せる上に、チョコも探してもらうという大胆なアイデアだ」

 弓槻くんは得意げな顔で言いきる。

「普通に張り紙でもすればいいんじゃないの?」

「公共物に無断で張り紙を貼るのは犯罪だろう」

 彼は真顔でそんなことを言う。

「教師に嘘をついて個人情報を手に入れたくせに」

 私はボソッと呟く。

「嘘も方便という言葉があることは知っているか?」

「そりゃあ知ってるけど……」

 この人には、口では勝てそうにない。私は反論を諦めた。

「とりあえず、今日はここまでだな。続きはまた明日だ」

 そう言いつつも、彼は分厚いファイルがぎっしり詰まった棚をあさっている。

「弓槻くんはまだ帰らないの?」

「少し調べたいことが残っている。君は先に帰ってくれてかまわない」

 そんなに遅い時間でないとはいえ、完全に任せきりにするのは気が引ける。

「私に手伝えることはないの?」

 手伝ってもらっているのは私なのに、この発言はおかしかったかもしれない。

 とにかく、弓槻くんに動いてもらってばかりなのは申し訳ない。