「あれ、あれぇ? ちょっと、やっぱりそういうことじゃないのぉ」
弓槻くんと私を交互に見比べて、ニヤけ顔でおばちゃんみたいなリアクション。目が三日月みたいになっている。
どう言い訳をしようか、必死で考える。でも、心の準備ができたら、藍梨には本当のことを話そうと思っていた。それが少し早まっただけだと思えば……。
意を決して、弓槻くんの耳元に顔を近づける。
「ねえ、弓槻くん。藍梨には本当のこと、話してもいいかな」
弓槻くんは、藍梨の方をチラッと見てから答えた。
「俺は別に問題ないと思うぞ」
「ちょっと、何をこそこそ話してるのよ。人前でイチャつくとは、いい度胸ね」
なおも煽ってくる藍梨に、真剣な表情で私は告げる。
「あの、この前の悩みのことで、藍梨に話したいことがあるの。驚かないで聞いて欲しいんだけど……」
「おろ、結構真剣な話みたいね。聞かせて」
周りに誰もいないことを確認した私は、できるだけ声をひそめて話し始めた。
「実は――」
私は、突然前世のものと思われる記憶がよみがえったこと、この学校でシロちゃんの生まれ変わりを探していること、その協力者が弓槻くんであることを打ち明けた。
最初から全部を信じてもらえなくてもいい。少しおかしくなってしまったんだと思われても、それはそれでかまわない。
けれど、なんでも話せるはずの親友に、悩みを打ち明けずに黙っているのは、私自身が許せなくて。
藍梨は、たとえこの話を信じてくれなかったとしても、他人に言いふらしたりするような人ではないことを、私は知っている。
とにかく、本当のことを話すことに意味がある。
自己満足と言われればそれまでかもしれないけれど、私なりの決意表明でもあるのだ。