そんなわたしの目に映るのは、凄惨たる光景だった。
わたし自身も、首から下はコンクリートの破片の下敷きになっている。
そして――目の前には、苦痛に顔を歪める男の子がいた。
その男の子を、わたしは知っている。
わたしの、運命の相手だ。
だけど、名前がわからない。
知っているはずなのに、出てこない。
でも、好きだということはわかっていて。
永遠の愛を誓い合った仲で。
わたしを大事に想ってくれる人で。
わたしの一番大切な人で――。
彼もわたしと同じように、瓦礫に埋もれている。頭からは、真っ赤な血が流れ出していた。内臓に被害が及んでいるからだろうか、口からも流血がある。
「シロ……ちゃん」
わたしの口から発せられた、弱々しい声。
目の前の瀕死の男の子は、シロちゃん。わたしは彼のことをそう呼んでいた。
「……風香」
すると、彼も同じくらい弱々しい声で、わたしの名前を呼んだ。
そうだ。月守風香。
それがわたしの名前だった。