「なんというか、すごい人だね、彼」
一足先に弓槻くんが去って、文芸部の部室には私と與くんの二人が残された。
「そうなのよ」
心の底から同意する。
「小説が一つ書けそうだよ」
「あはは」
これには私も苦笑いだ。
「じゃあ與くん、執筆の続き頑張って」
「ありがとう。それじゃ、また」
私も部室をあとにして、廊下で待っていた弓槻くんと合流する。
「與時宗は、猫は苦手ではないようだな」
「みたいだね。でも、なんで連絡先なんて教えてもらったの? 私が知ってるのに」
「可能性は全部潰しておかないと駄目だからな」
可能性? なんの可能性だろう。
「どういうこと?」
「そのうちわかる。それよりも、君はどうなんだ?」
「え?」
「彼に対して、その、どう言えば正確なのかわからないが、運命的なものは感じたりはしないのか?」
ああ、そういうことか。
たしかに、シロちゃんは記憶の中で、二人はひかれ合うというようなことを言っていた。
運命の相手、つまりシロちゃんの生まれ変わりに対してなら、何かしら特別な感情を感じる可能性はあるかもしれない。