「念のため、連絡先を教えてもらってもいいか?」
弓槻くんが言った。私が知っているから不要だと言おうとしたけど、そんなことは彼もわかっているはずだ。きっと弓槻くんなりの考えがあるのだろう。
「連絡先? 別にいいけど……」
「おっと、電池が切れてしまいそうだ」
弓槻くんはタブレットをしまう。
そして、パソコンの隣に置かれているメモ用紙を指さして言った。
「紙に書いて渡してくれ。財布にしまっておきたいから、そこのメモ用紙の半分くらいの大きさがちょうどいいな。切ってもらえるとありがたい」
「わかった」
與くんは弓槻くんの注文通りに、メモ用紙を折って、器用に両手を使い半分に裂いた。
そこにボールペンでメールアドレスと電話番号を書き、弓槻くんに手渡す。
「たしかに受け取った。何か聞きたいことが増えたら、こちらから連絡させてもらう。そのときにはまた協力を頼む」
「ああ、うん」
何かを頼む態度とは思えないような無表情で告げる弓槻くんと、雰囲気のままにうなずく與くん。
さっきは暗いところが似ているかもなんて思ったけど、前言撤回。全然違う二人だ。