「そうか。ということは、猫に対して苦手意識はないな?」
「うん、ないよ」
「ふむ。昔は猫が苦手だったということもないか?」
「自分が覚えている範囲ではないはずだけど……」
「そうか。協力、感謝する」
「それで、このアンケートはなんなの?」
やっぱり聞かれた。そりゃ、気になるよね。
弓槻くんはどう答えるんだろう。ハラハラしながら、二人の会話の行き先を見守る。
しかし、そんな私の心配などものともせず、彼は表情を一切変えずに、堂々と嘘を並べ立てた。
「最近この近くに霊力の強い黒猫が現れて、嶺明高校の猫好きの誰かに取り憑いているらしいんだ。俺は今、その猫の正体を追っている。猫より犬が好きと答えたから、君はおそらく大丈夫だとは思うが、猫を見かけたら気を付けろ。取り憑かれる可能性がある。無闇に近付くのは危険だ」
もちろん弓槻くんの考えた冗談だろう。笑い飛ばすのが一般的な反応である。が、彼のオカルト研究同好会会長という肩書きに真顔という組み合わせが、笑い飛ばせるような雰囲気にさせないのだ。
私は申し訳ない気持ちになるが、與くんは圧倒されている。
「え? 霊力? 黒猫が、取り憑く……? わ、わかったよ。ありがとう」
勢いに押されてお礼まで口にする與くんからは、人のよさがうかがえた。