「ありがとう。ところでそちらの人は?」

 弓槻くんを見て、私に問いかける。

「ああ、こちらは私のクラスメイトの弓槻くん。オカルト研究同好会の会長で、ちょっと簡単な調査をしてるみたい。すぐ終わるから協力して欲しいってことなんだけど……」

 打ち合わせ通りの台詞。
 騙すのは気がひけるけど、本当のことを言ってもどうせ信じてもらえない。それに、完全に嘘ってわけじゃないし。

「うん。大丈夫。ちょうど息抜きしようと思ってたところだから」

 オカルト研究同好会などという不思議な名前を聞いても、わりとすんなり受け入れてくれたことにホッとする。が、與くんの視線には警戒心が若干混じっていた。変な人だなぁ、くらいは思っているみたいだ。

「ありがとう」

 罪悪感を顔に出さないように気をつけながら、私はお礼を言った。

「では早速、質問させてもらう」

 弓槻くんが一歩前に出て、タブレットとタッチペンを取り出す。ゴム製の丸いペン先で、何度か画面をタッチした。

「猫は好きか?」

「……猫?」

 オカルト研究同好会らしからぬ質問に、與くんは一瞬、虚を突かれたようにぽかんとする。

「ああ」

 弓槻くんが真顔を崩さずに頷くものだから、與くんも真面目に回答する。

「う~ん。どちらかっていうと犬の方が好きだけど……。猫もかわいいと思う」

 ボソボソと自信のなさげな声。