自分で自分の作品を客観的に見ることは、とても難しい。それは私もわかる。
去年の文化祭のために私が書いた短編は、自分ではそこそこ面白いと思っていたのに、部員たちからはあまり良い評価を得られなかったのだ。今年は見返したいと思っている。
「そっか。審査員との相性もあるもんね」
「うん。僕の作品は今までの公募だと、余計な描写が多いって言われることがよくあって。自分では全部必要だと思って書いてるんだけどね」
與くんは少し悔しそうに、そんな愚痴をこぼす。
審査員との感性のずれだけではなく、最近は将来についても悩んでいるようだ。本当に小説を書いて食べていけるのか、というようなことをこの前言っていた。
けど、もう少し自信を持ってもいいんじゃないかと思う。私も他の部員も、彼の作品を面白いと言っているのだから。
「それは、審査員の人がちゃんと読み取れてないだけじゃない?」
「そうだといいんだけど……」
「きっとそうだよ。頑張って。與くんなら、きっといい結果が出ると思う」
地味で目立たない與くんは、私と同じくあまり社交的でない。
さらに、読書という共通の趣味のおかげでもあってか、男の人が苦手な私がこの高校で唯一、普通に話すことのできる男子である。