「生まれ変わり後の成長過程で克服する場合もあるからな。なんとも言えない。だが、克服していたとしても、昔は怖かったはずだ。人間は、生まれつきなぜか怖いと思うものがあるだろう。それは前世で恐怖の対象だったもの、もしくは死の原因になったものである場合がほとんどだ」

 言われて思い出す。私も昔から、バスが怖かった。怖かったというより、現在進行形で怖い。

 そして月守風香は、乗っていたバスが事故に巻き込まれて亡くなった。

 私の前世が月守風香であるという説を強める要素が、一つ増えた。

 トンネルにあまり恐怖を感じないのは、起きたときにはすでに、トンネルが崩れていたからだろうか。バスに乗ったら事故で死んだ、というイメージが定着して、バスにだけ恐怖を抱くようになったのかもしれない。

「つまり、私がシロちゃんの苦手だったものについて思い出せれば、生まれ変わりを見つける手がかりになるってことね。あれ、じゃあ――」

 記憶の中で、猫から怯えて逃げてきたシロちゃん。猫恐怖症なんて言葉が存在するのかどうかはわからないけど、シロちゃんの生まれ変わりに猫への恐怖心が引き継がれている可能性はあるのではないか。

「そう、君が今朝思い出したという月守風香の記憶が、重大なヒントになるかもしれない。現時点ですべきことは、四人の中から猫が苦手な人間を探すことだ。もちろん、シロちゃんは猫が苦手だと決まったわけではない。が、他に予想できるものもないからな。今現在の方針としてはそんなところになる。とにかく、情報は多い方が良いに越したことはない。新しく、シロちゃんが苦手なものに関してわかったら、すぐに教えてくれ」

「うん」

そうして、調査は始まった。