「へぇ。でも、よく教えてもらえたね。一応個人情報でしょ?」
「相性占いの正当性について研究したいから、この学年の生徒の血液型と生年月日のデータが欲しい、というようなことを言ったらすんなり教えてくれた」
「相性占いって、そんな……」
呆れを通り越して、笑いさえ生じてくる。
でも弓槻くんなら、それくらいの嘘はすらすら口から出てきそうだ。
「まあ、俺も信用されているからな。今回のテストも数学は満点だった。といっても、住所や電話番号だったら榮槇先生も教えなかっただろう」
ちょ、ちょっと待って。今なんて言ったの?
「満……点?」
間違えた問題がなかったのなら、数学のテスト返却のときの彼の態度もうなずける。解説なんて必要ないのだから。
ちょっといい点数をとって満足している自分が、なんだか情けなくなった。
驚いている私をよそに、弓槻くんは話題を変える。
「そういえば、チョコをどこかで見かけなかったか?」
「いや、見かけてないけど……。チョコがどうかしたの?」
「いつもは昼になるとこの部室に現れるんだが……。さっき、君が来る前に確認したときはまだいなくて、少し心配になっただけだ。まあ、そのうちひょっこり現れるだろう」
弓槻くんの表情には、微かに不安が混じっていた。
「うん。きっとそうだよ」
「さっそく、一人目の與時宗に会いに行くぞ」
うなずき、椅子から立ち上がった瞬間、ぐぅ~、と私のお腹が鳴った。あまりの恥ずかしさに顔を赤くして下を向く。
「あ、えっと……」
「そういえば何も食べていなかったな。先に食堂にでも行こう。それでいいか?」
弓槻くんに気を遣われて、余計恥ずかしくなる。いっそ笑って欲しかった。
「は、はい」
私は顔を下に向けたまま、小さな声で答える。