自転車を漕ぎながら、頭が少しボーッとしてきた。暑さのせいもあるのだろうけど、それだけじゃない。昨日も徹夜でノートの見直しをしていたからだろうか。

 早く帰ってすぐに寝よう。そう心に決める。

 しかし、私はこの後、予想外のアクシデントに襲われる。

 眠気と疲労による注意力と集中力の低下。

 穏やかな天候であるにもかかわらず、突発的に吹いた強めの風。ただの自然現象とは思えない。その風には、私に危害を加える意志があったようにさえ感じる。

 自転車を漕いでいた私は風に煽られて、バランスを崩してしまった。歩道と車道を分割する縁石に、自転車の前輪がぶつかる。

「……っと!」

 ボーッとしていた脳も覚醒し、とっさに縁石に足をつく。しかし、自転車はこのときすでに、立て直せないほどに傾いていた。

 慣性の法則は無情にも、私を歩道から車道へと押し出す。その結果、勢い余って地面に体が投げ出された。

 ザリッ、と両膝と両手をコンクリートの地面で擦ってしまう。ここまでであれば、自転車で転んだという、ただそれだけの笑い話である。が、このとき不運にも、後ろからトラックが迫っていた。

 意識のある私が最後に聞いたのは、鳴り響くクラクションの音だった。