放課後、オカルト研究同好会の部室へ向かう途中のことだった。

 前方を、榮槇先生と一人の男子生徒が並んで歩いているのが視界に入る。

 なんとなく追い越すのもためらわれて、同じくらいの速度を保ちながら歩くことにした。すると、二人の会話が耳に入ってくる。

「少しわからない数学の問題があって、お聞きしたいんですけど……」

 男子生徒の、低く落ち着いた声。

「相変わらず勤勉だね。もっと遊んだりとか、しなくていいの? 教師の僕が言うのもなんだけど」

「そんな……父に怒られます」

「厳しいもんね、あの人。元気でやってる?」

「はい、まあ」

「そっか。よろしく言っておいて」

「わかりました。それで、この問題なんですが――」

 ずいぶん真面目な生徒だなと思った。それに、榮槇先生と男子生徒の父親の間には、個人的な繋がりがあるように聞こえた。

 階段にさしかかると、彼らは下の階へ降りて行き、声も聞こえなくなった。職員室にでも行ったのだろう。

 私は階段の手前の通路を曲がって、オカルト研究同好会の部室へ向かった。