鳴瀬(なるせ)さん」

「はい」

 いよいよ私の名前が呼ばれ、緊張しながら教壇へ向かう。テスト返却って、テスト本番よりもドキドキするよね。

 模範解答を一枚つまみ、裏返ったままの答案を受け取る。

 耳元で「よく頑張ったね」と榮槇先生の声が聞こえた。そのささやきは、心拍数の上がっていた私の心臓を、さらに激しく鼓動させた。

 軽く頭を下げて、踵を返す。

 席に戻り、恐る恐る答案を表にする。

 九十点。信じられないような高得点だった。過去最高の点数でもある。バツがつけられているのは二問だけ。

 驚きが去ったあとに湧いてきたのは、嬉しさだった。頑張ったかいがあった。自然と頬が弛む。

 あれ、嬉しいのは良い点数だったから?

 それとも――。

「全体的に計算問題のケアレスミスが目立ってました」

 全員分の答案用紙を返し終わった榮槇先生が、解説を始める。

 私も一問だけケアレスミスをしている。計算の過程を見て、すぐに間違いに気づいた。なぜそこを間違えるんだ、というような初歩的なミス。

 今見てみると、どうしてこんなに馬鹿げた間違いをしたのか理解に苦しむ。でも、ケアレスミスといのはそういうものなのだ。