「せんせー、綺麗で可愛いバスガイドさんは俺たちのバスに入りますかー?」
続けて発せられたその質問に、クラス中が笑いの渦に包まれる。
発言したのは、先程も下らない質問をした彼。クラスでは、お調子者のポジションを定位置にしている。
わたしは、面白くもなんとも思わなかった。
ただ、こんな無駄な時間は早く終わってしまえとだけ感じていた。
「残念ながら入りません。バスに乗るのは皆さんと先生だけです」
担任の教師は、笑い声に負けないよう、声を張り上げて否定する。
いつもこんな感じで苦労しているためか、慣れた様子だった。
「せんせー!」
またもや彼が挙手したところで担任が遮る。
「篠崎くん、あんまりうるさいとバスの座席、先生の隣にするよ。このクラスは三十七人で奇数だから、それでちょうどいいでしょ?」
どうやらお調子者の彼は、篠崎くんというらしい。そう言われてみればそんな気もする。
十一月にもなってクラスメイトの顔と名前が一致しないのは、自分でもどうかと思うけど。
「いやでーす」
担任の若干怒気をはらんだ言葉にはそう答えつつも、篠崎くんはちょっと喜んでいたように見えた。
きっと、若い教師である彼女の気を引きたいのだろう。中学生の男子は子どもだ。
笑いに包まれる教室の前方で、担任は、パン、と手を叩いて注目を集める。
「じゃ、バスの席決めるよ。一番後ろの席が五人、それ以外は二人ずつ。自由に組み合わせを作ってください」
生徒たちは一斉に、仲の良い友人のところへ、席を立って急ぐ。