後輪についた鍵を開け、私は自転車を引っ張り出す。
正門とは別の、自転車通学の生徒が使う門をくぐり、ペダルに足を、サドルにお尻を乗せる。そして、駅へ向かって愛車を漕ぎ出した。
解放感をエネルギーに変換し、ペダルを蹴ってぐんぐん進む。
今日は、一学期の期末テストの最終日だった。明日から三日間、テスト返却が行われ、晴れて夏休みとなる。が、テストの解説をしっかり聞くような生徒は、ごく一部の真面目な人たちだけである。もちろん私は、そんな真面目な生徒には含まれない。
そんなわけで、私の気持ちは一足先に夏休み。肝心のテストも、そこそこできた自信がある。
身も心も、羽が生えたように軽かった。
嶺明高校は、それなりに偏差値が高い。ギリギリ進学校と呼ばれる程度だけれど。
そんな中で、私の成績はかなり上の方をキープしていた。これは、私が自慢できる数少ないことの一つである。
成績はそれなりに良好だからといって、決して頭がいいというわけではない。
私は文芸部に所属していて、その活動は週に二回。運動部に所属している大多数の同級生に比べて、普段から勉強する時間を確保することができている。それだけだ。
記憶力が並外れているとか、勉学の神様に愛されているんじゃないかというレベルで天才だとか、残念ながらそういった事実はない。それに、人並みに勉強は嫌いだと思う。最低限やることはやっておかなくては、という不安だけが、小心者の私を毎日机に向かわせている。
運動部や一部の活動的な文化部の生徒が引退して勉学に励むようになったら、私の順位は瞬く間に急降下するのではないかと、二年生である今でもすでにビクビクしている。