「それに」
彼はタブレットをバッグから取り出して操作をする。
「それだけ大きな事故なら、ニュースにもなっているはずだ。……ほら、これだろ?」
タブレットの画面を私に向ける。そこには、ある事故の情報が記されていた。
トンネルの天井盤が落下し、バスが炎上。バスに乗っていたのは、修学旅行に向かう途中の中学生と、その担任の教師。
日付は、十七年前の十一月十九日。
間違いない。私が見た記憶の中の事故だ。
劣化していたトンネルの天井盤の落下に、修学旅行で京都へと向かうバスが巻き込まれ、三十八人の死亡者が出た。
かなり大規模な事故だったらしい。事故に巻き込まれたのがバス一台だったことは、不幸中の幸いだとも書かれていた。
「そうです。やっぱり、本当にあったんですね」
これで、記憶の中の事故が、実際に起きたものだということが正式に判明した。
それにしても、なぜニュース検索という手を思いつかなかったのだろう。自分の発想の乏しさに、少しへこむ。
「そうみたいだな。しかし……」
弓槻くんはまだ納得がいっていない様子だ。
「どうかしたんですか?」
「作り話だとか妄想だとか、俺に判断することはできないと、さっきはそう言った。それに俺は、生まれ変わりという現象は存在すると確信している。が、君が本当に、その月守風香という少女の生まれ変わりかどうかについての個人的な見解としては、まだ疑う気持ちが少しある」
「え?」
なんだか突き放された気分だ。
だが、考えてみれば当たり前だった。
いきなり、前世の記憶がよみがえったんです、なんて言われて、丸ごと信じる方がおかしい。