「さて、そろそろ本題に入ろうか」

「あ、はい」

 テーブルに戻った私たちを、緊張感が包む。

 弓槻くんは真剣な目付きになり、私に話を促した。

「昨日の帰りのことだったんですけど――」

 自転車で転び、トラックにひかれそうになって気を失ったこと。

 目覚めると、月守風香としての記憶を思い出していたこと。

 その記憶の中での出来事。

 シロちゃんと呼ばれる少年が放った意味深な言葉。

 ありのままをすべて話した。

 話をしながら、ほとんど内容を忘れていないことに気づく。きっと、それだけ衝撃的な出来事だったからだろう。

「ふむ。君はその記憶が前世のものだと、つまり、自分が月守風香の生まれ変わりだと思ったわけか」

 弓槻くんは、真っ直ぐに私を見据えて言った。

 とりあえずは突っぱねられなかったことに安堵する。『そんな作り話、誰が信じるか』と言われることも覚悟していた。

「はい」

「そう思った理由は、何かあるのか?」

「それは……言葉では言い表せないというか……。直感としか、今は言えません。私だって、まだ半信半疑です。でも、他人が経験したことを聞いたものだとか、頭を打っておかしくなったとか、可能性としては考えられても、この記憶は実際に体験したことのようにしか思えないんです。やっぱり……信じられないですよね」

 少し考えるような間があってから、弓槻くんは口を開いた。

「いや、直感は大事だ。それに、君の話を作り話だとか妄想だとか、根拠もなしに判断することはできない。もう少し情報が欲しいところだな」

 百パーセント完全に信じてくれたわけではないにしても、興味は持ってもらえたようだ。