「そういうわけでもない。いきなり姿を見せた黒猫に、俺は話しかけたんだ。『チョコが欲しいのか?』と。霊的な力を持った猫であれば、人間の言葉も喋れるのではないかと思った」
さすがオカルト研究同好会だ。
「は、はい。それで……」
若干理解に苦しみながらも、なんとかあいづちを打つ。
「チョコは『ミャー』と鳴いた。もちろん、猫はチョコレートを食べると中毒症状を起こすからな。実際に食べさせはしなかった。俺が『ダメだ』と言うと、チョコは黙って俺を見つめた。もう一度『チョコはダメだ』と言うと、また『ミャー』と鳴いた。俺は、もしかしてと思って『お前の名前はチョコなのか』と聞いた。すると、こいつはまるで応えるように『ミャー』と鳴くんだ」
「偶然じゃないんですか?」
「こいつは『チョコ』と言うと反応するんだ」
「ミャー」
「あ、本当だ」
「つまり、俺に会う前から、こいつはチョコだったんだよ。ちなみに、チョコが霊的な力を持っている可能性はまだ捨てていない」
「霊的な力……ねぇ」
さすがオカルト研究同好会会長。思考がオカルトだ。



