オカルト研究同好会の部室は校舎の一階に位置していて、入口の向かい側の壁はガラス製の扉を隔てて、中庭に面している。
残念ながら大量に積まれた段ボールのせいで、中庭につながる扉自体は閉ざされてしまっているものの、一部ガラスが割れている部分があり、そこだけは外界に通じていた。
段ボールの切れ端とガムテープで補修されているが、テープが貼られているのが上部だけであるため、持ち上げることで簡単に開く。
つまり、小さい生物であれば、簡単に出入りできるようになっていた。
「ちょうど来てるみたいだ」
弓槻くんがしゃがみ込む。
「うわっ⁉」
思わず声を上げる。
そこには、毛づくろいの最中の黒猫がちょこんと座っていた。
私を見上げて、興味を示したのはわずか二秒程度。すぐにプイと顔を背ける。
「この場所が気に入ったみたいで、住み着いてしまったんだ」
「へぇ」
黒猫の頭を撫でると、気持ちよさそうに喉を鳴らした。
「名前はなんていうんですか?」
「チョコだ」
弓槻くんの口から、かわいい名前が出てきたことに少し驚く。
ケビンとか闇夜とかそういう格好良い名前を想像していた。



