――てっきり告白かと思っちゃったじゃん。
 休み時間の藍梨の言葉がリフレインする。

 彼女には、私が告白のために弓槻くんを呼び出したと思われていた。クラスメイトも、そういう目で私を見ているのだろう。

 いったん意識し始めると、恥ずかしさが込み上げてくる。

「あの、ごめんなさい」

 思わず、そんな言葉が口から滑り落ちていた。

「……何がだ?」

 弓槻くんは振り返って、不可解そうな様子で私を見る。

「私と、その……そういう噂とか、迷惑じゃない?」

 その一言で察してくれたようだ。

「君は俺に、そういうことを伝えたくて呼び出したのか?」

 そういうこと、というのは恋愛的な意味での好意のことだろう。

「あ、いや。違う、けど……」

 きっぱり否定するのも失礼な気がして、言葉尻を濁した。

「なら問題ない。他人にどう思われようが気にしなければいいだけの話だ」

 彼はそう言って、再びすたすたと歩き出す。
 本当に気にしてない様子だ。

 その背中を見て、強い人だな、と思った。