古典のテスト返却が行われた。

 私は手応え通り、そこそこの出来だった。

 藍梨が騒がしく喜んでいて、そんなにいい点数だったのかと思っていたら、どうやら補習を免れただけらしい。

 続く世界史のテストでも、私はそこそこの点数をマーク。

 そんなテスト返却の間、私はやたらと視線を感じていた。それも、特定の誰かからではなく、不特定多数の人間からの視線だ。こそこそと噂をされているような気もする。

 なぜだろうか。何か、悪いことをしてしまったのかと不安になる。

 二科目分のテスト返却が終わって、休み時間。

 謎の視線の正体も判明する。

「琴葉、大胆なことしたね」

 私の机までやって来た藍梨が、開口一番でそう言った。

「え?」

 大胆なことって?

 私はなんのことかわからず、疑問を露わにした。

「ほら、今朝のこと。あんな堂々と呼び出して。みんな注目してたよ」

 どこかに行っているらしく、空席になっている弓槻くんの席をチラッと確認してから、藍梨は続けた。

「で、弓槻のどこを好きになったわけ?」

 周りのクラスメイトの何人かも、私たちの会話に注目している。

「えええええっ!? 違うよ! 弓槻くんとは、別にそういうんじゃなくって……」

 両手を胸の前でぶんぶんと横に振り、慌てて否定する。