そういえば、弓槻くんはオカルト研究同好会の会長だった。彼は、そんな謎の同好会の会長として有名でもある。他に会員がいるかどうかは不明。噂によると、弓槻くんはオカルト現象の解明に真剣に取り組んでいる……らしい。

 そういうところも、近寄りがたさを助長している。

 待てよ、前世の記憶がよみがえるって……。これはまさしく、オカルト現象以外の何ものでもない。

 彼に相談してみようか。オカルト研究をしているのだから、信じてもらえる可能性もある。
 もしかすると、何か有益な情報が手に入るかもしれない。

 私の悩みを打ち明けるのに、これほど適した人間はいないように思える。

 問題は、二人の親密度だった。私と彼の関係はただのクラスメイトであり、ゼロに等しいと言って差し支えないだろう。いきなり話しかけるのはためらわれるし、正直怖い。それに、弓槻くんは今、本に集中しているところだ。

 あとででいいや、などと思って声をかけるのを先延ばしにしてしまえば、そのまま話しかけずに終わる未来が簡単に想像できる。

 何か情報が得られるかもしれないという期待と、彼に話しかける怖さを天秤にかける。

 そして、天秤は傾いた。

「あのっ!」

 半ば強制的に勇気を絞り出して、なんとか話しかけることに成功した。緊張で心臓が激しく動いているのがわかる。