「どうしたの、ため息なんかついて。あ、テストがダメだったんだ。めっずらしー! 私と一緒に補習受ける?」
わざわざ私の席まで移動してきて、藍梨は嬉しそうに言う。朝からテンション高めの彼女に若干辟易しながら、私は顔を上げた。
というか、まだ返却すらされてないのに補習って……。どうやら今回も、彼女はテストができなかったらしい。
「いや、テストのことじゃないんだけど、ちょっとね。悩んでることがあって……」
本当はちょっとどころではない。
「悩みごと? よかったら聞くよ」
悩みを聞いてくれる友人がいるというのは、喜ばしいことではあるのだけれど、
「ごめん、今はちょっと話せないかな。ちゃんと整理できたら、きっと話すと思う。ありがとね」
私はそう言って断った。
「そっかそっか。おっと、そろそろホームルームだね。それじゃ、また」
軽く手を上げて言うと、藍梨は自分の席へ戻って、先ほど揃えたルービックキューブをぐちゃぐちゃに崩し始めた。
気にかけてくれつつも、無理には踏み込んでは来ない。いい友人を持ったものだと喜ばしく感じる。私にはもったいないくらいだ。
でも、気を失ったショックで前世の記憶がよみがえりました、なんて……。そんなこと、藍梨にだって相談できない。
しかし、私一人で抱え込むにはこの問題は複雑すぎるのも事実で。誰か、相談できる相手が欲しいところだ。やっぱり藍梨に話してしまおうか……。