私は今日、與くんにすべてを話すつもりだった。といっても、與くんはシロちゃんの生まれ変わりではなかったわけだから、その計画は中止だけど。

 そして、與くんにすべてを話した上で、榮槇先生に気持ちを伝えるつもりでいた。

 気持ちだけ伝えて終わりにしよう。
 私はまだ、誰とも、どうにもならない。

 そう思っていたのに、状況が変わってしまった。

 ――一番よくないのは、その場から動かないこと。立ち止まって待っているだけでは何も解決しません。望むものは、自分の手でつかみ取るのです。

 そんなことはわかっている。わかっているけど、望むものが何かわからなければ、動きようもない。

 私はそのまま屋上で、数分間ボーっと立っていた。

 気づくと、黒い髪に覆われた私の頭部が、太陽光を吸収して熱くなっていた。こめかみには汗も流れている。
 比較的涼しい校舎に避難することにした。

 私が何を迷っているのか、なんとなく理解できた。

 私が榮槇先生を好きになったのは、運命の相手だから。
 そんな推測をして、自分の気持ちを疑っているのだ。
 私が恋をしたわけじゃないのかもしれない。

 考えれば考えるほど、そうとしか思えなくなる。
 私が先生を好きな気持ちは、月守風香のものであって、鳴瀬琴葉の気持ちではないのではないか。

 ――嫌なことや難しいことにぶち当たるときは必ず来るの。そんなときに、琴葉はそれを乗り越える強さを持ってるんだよ。

 藍梨はそう言ってくれたけど、やっぱり私は弱い。

 だから、今この瞬間に強くなろう。

 そう思った。