夏の風の記憶に、君と運命の恋を探す


「申し訳なかった」

 弓槻くんが突然、勢いよく頭を下げる。

「え?」

「前世の君の、月守風香の命は、俺が奪ったようなものだ。だから、本当に、申し訳ない」

「やめてよ。弓槻くんは天乃さんじゃないでしょ? それに、事故だったんだし、天乃さんが悪いわけでもない。風香もシロちゃんも、それに他のクラスメイトも、もちろん私にも、天乃さんを責める権利なんてないよ」

 弓槻くんの話に、矛盾点はないように思う。

 生まれ変わりの研究を始めたきっかけも、この嶺明高校に入ったきっかけも、私とシロちゃんの生まれ変わりを引き合わせるためと考えれば、改めて説明できる。

 先端恐怖症も、瓦礫が刺さったことが死因だったからだろう。

「でも、これで本当に、シロちゃんの生まれ変わり候補が私たちの学年にはいなくなっちゃったってことだよね」

「ああ。下の学年も調査対象にしなければな」

 私たちの学年に、シロちゃんの生まれ変わりがいるという前提が間違っていたことになる。

――背理法というのは、証明したいことと逆のことを仮定して、そこから矛盾を導くことによって、目的の証明を果たす方法です

 私たちの立てた仮定は〝シロちゃんが嶺明高校の二年生である〟ということ。

 そして、矛盾が発生し、その仮説は否定された。