夏の風の記憶に、君と運命の恋を探す


 保健室特有の匂いに、シロちゃんと初めて会った日を思い出す。

 あの日から、全部始まったんだ。

 月守風香とシロちゃんの運命は、死という絶望的な悲劇にも負けずに時を超えて、私と弓槻くんを引き合わせた。

「一人で大丈夫そう?」

 榮槇先生が心配そうに聞く。

「はい」

「僕は屋上のフェンスが壊れた件で、報告とかしなきゃいけないから」

「わかりました」

 私のしっかりした受け応えに安心したようで、榮槇先生は保健室を出て行った。

 シロちゃんの生まれ変わりである弓槻くんは、ベッドで穏やかな寝息を立てて眠っている。私はその横の丸椅子に腰かけて、彼のことを見つめていた。

「ねえ、弓槻くん。私も、弓槻くんのことは好きだと思う。けど、それは恋愛的な意味じゃないかもしれなくて……。実はね、別に好きになっちゃった人がいるんだ。その人には黙っていようと思ったんだけど、やっぱり気持ちだけでも伝えてみようかなって思った。弓槻くんが、さっき私に気持ちを伝えてくれたから、私も頑張ってみる」

 弓槻くんがゆっくりと目を開けたのは、そんな私の独り言の数秒後だった。

 待って。今の、聞こえてなかったよね?
 首から上が熱を帯びる。