夏の風の記憶に、君と運命の恋を探す


「俺は三月生まれでAB型だ(●●●●●●●●●●)

 弓槻くんのその言葉は、数秒かけてじわじわと、私の頭を真っ白に染め上げた。

「えっ!? 待って! ってことは――」

「そうだ。シロちゃんの生まれ変わり候補は五人いた」

 五人目の生まれ変わり候補である弓槻くんは、申し訳なさそうな顔で続ける。

「もし君にそのことを教えてしまったら、他の候補たちと同じような客観的な視点で見れなくなってしまうと思って黙っていた。本当にすまない」

 申し訳なさそうに頭を下げる弓槻くん。

 こういうときは、怒ればいいのだろうか。でも、怒ったところでどうにもならないし、そもそも本当に怒っているわけではない。

 多少、嘘をつかれていた悲しさはあるとしても、驚きに比べればほんのちっぽけなものだった。

「じゃあ……」

「ああ。他の四人がシロちゃんの生まれ変わりではないことが証明された以上、可能性があるのは俺だけだ。尖っているものに苦手意識もある。俺が、シロちゃんの生まれ変わりだ」

 先ほどとは比べ物にならない衝撃。

「また、冗談だ、とか言うんでしょ? だって、そんなの……」

 自分でも、顔が引きつっているのがわかる。

 箸やフォークは使用せず、スプーンのみを使っての食事。

 メモ帳とペンの代わりに、タブレットと先の丸いタッチペン。

 伊凪くんの『あまり架流(かける)に指を向けるなよ』という言葉。

 その全てが、弓槻くんが先端恐怖症であるという事実を裏付けていた。

 昨日、チョコを埋葬する穴を掘るためにスコップを持ったときに、手を震わせて呼吸を荒くしていたのも、スコップの先端が尖っていたからか。

 あの震え方は、演技とは思えなかった。