「で?」

 弓槻くんは、私に続きを催促する。

 もう彼も、私の言いたいことはわかっているはずなのだが。

「残りの一人、(あたえ)くんがシロちゃんの生まれ変わり。彼が、私の運命の相手」

 私は、強い自信を込めた目で彼を見た。

 しかし弓槻くんは、
「本当にそうか?」
 静かに言った。

 どういうこと? だって、残りは一人しかいないわけで……。

 それに、ちゃんと與くんは尖ったものが苦手だという証拠もある。

「私、覚えてるよ。文芸部の部室で、弓槻くんが與くんに、紙を切るように要求したこと。あれは、與くんが近くにあったハサミを使うかどうか試したんじゃないの?」

 弓槻くんは與くんに、紙を切ってそこに連絡先を書くように促した。
 その際、與くんは近くのペン立てにハサミがあったにもかかわらず、なぜか手で紙を裂いた。

 これは、彼が先端恐怖症だという証拠なのではないか。

「じゃあ、俺からも一つ質問をしよう。與時宗(ときむね)は、連絡先を書くときに、何を使った?」

 何って、そりゃ、覚えてるけど……。

「ボールペ――っ!!」

 全身に大きな衝撃を受けたかのようだった。

 先端恐怖症の人間が、ボールペンなんて尖ったもの、使うはずがない。