嶺明高校は私の通っている高校であり、私は一年と三ヶ月前に入学した。

 風香の記憶が本当に過去の出来事だとすると、シロちゃんの言う通りになっているのがこれ以上なく不気味で、全身に鳥肌が立った。

 自由で活気溢れる校風にひかれて、というのが、私の表向きの志望動機。面接で質問されたときも、そんな用意された模範解答を並べた。

 だが正直、校風などはどうでもよかった。
 嶺明高校に行きたいという気持ちが、いつの間にか中学生の私にあったのだ。

 今考えてみるとそれは、行きたいという気持ち、などという生半可なものではなく、行かなくてはならない、という純然たる使命感であるように思われた。

 学力が多少足りなかったけれども、それなりに受験勉強に力を注ぎ、入試本番でも運よく直前に見直した問題が出たりした。

 受験勉強は楽しかったと言えるものではなかったし、模試で結果が出なくて焦ったりもしたけれど、合格を知ったときは嬉しかった。

 多くの人が体験してそうな、よくある受験のエピソード。そんな自然な流れが、今考えると不思議でならない。