「猫の肉球を押したとき、出てくるものって何か知ってる?」
弓槻くんがその答えも知っているであろうことを承知の上で、私は問う。
「爪、だな」
「そう、爪。つまり、シロちゃんはあのとき、猫に怯えていたわけではなかったの。あくまで、女子生徒が猫の前足をつかんだときに現れた爪を恐れていた」
それを聞いて、弓槻くんがニヤりと口角を上げる。
「つまり、シロちゃんの恐怖の対象は――」
「先の尖ったもの。裁縫のときに使う針も、先端の鋭いシャーペンも鉛筆も、猫の爪すらも、彼にとっては恐怖の対象だった」
そして、傘もそうだ。
「先端恐怖症だな」
「そう。ここまでは、弓槻くんの考えと一緒?」
その質問の答えは、今までの弓槻くんの反応でもわかるように、すでに明らかだった。
「ああ。その先はどうかわからないがな」
彼は余裕のある笑みを浮かべる。
「そうね。次に私は、四人のシロちゃんの生まれ変わり候補について考えて、その中から、先端恐怖症でない人を除外していった」
二人の間に、緊張感が漂う。
「答えは出たのか?」
「うん」
「そうか。聞かせてもらおう」
少し弓槻くんの表情に陰りが見えた気がする。
何か、間違ったことを言ったのだろうか。