スマートフォンに、一件のメッセージが入っていた。
弓槻くんからだ。
今日の日付のあとに『15時に屋上』とだけ書いてあった。彼は電子の世界でも不愛想だ。
きっと、真相を話すつもりなのだろう。
それなら、私が答えを言い当てて、逆に驚かせてやろう。
約束の時間に余裕を持って、少し早く家を出た。
いよいよ全てが終わる。
有り余るほどの緊張感と、ほんの少しの寂寥感に包まれながら、私は嶺明高校へと向かった。
夏休みの校舎は人が少ない。
弓槻くんとの待ち合わせ場所である屋上へすぐには向かわずに、中庭に出てオカルト研究同好会の部室の前へと歩を進めた。
わずかに盛り上がった地面に、木の板が立てられている。
昨日弓槻くんと作ったチョコのお墓だ。
お墓の前にしゃがむと、目を閉じて両手を合わせる。
それから、ポツリポツリと、言葉をこぼす。
「羽酉先生、ありがとうございます。それと、ごめんなさい。私、ちゃんとやってます。友達だっています。今は月守風香じゃないけど。でも、彼女もきっと本心では、先生に感謝してました。月守風香の生まれ変わりの私が、今こうやって学校生活を楽しめているのも、先生のおかげかもしれないです」
前世では、月守風香の担任教師の羽酉知世子として生きていたチョコは、猫に生まれ変わっても自分の生徒のことが心配だったらしく、私と現世で再会を果たした。
――まるで、君に会ったことで役目を果たしたかのようだった。
弓槻くんのその言葉は、的を射ていた。
羽酉先生は、ちゃんと月守風香のことを考えていてくれた。
シロちゃんが言った通り、すごくいい先生だ。