唯一の例外がシロちゃんだった。
なぜか彼のことは信用することができた。
一目見たときから、シロちゃんはわたしのすべてだった。
きっと、運命というのは、そういうものなんだと思う。
わたしはシロちゃんと、この先ずっと一緒にいる。
そんな安心感も、他人とのかかわりを避ける原因となっていた。
心配してくれているらしい羽酉先生には少し申し訳ないかもしれないけれど、わたしは変わることがないまま卒業してしまうと思う。
わたしとシロちゃんは校門をくぐった。
周りの生徒たちのほとんどが傘をさしている中、レインコートを着たわたしたちは、隣り合って歩く。
月守風香のことをもっと知りたい。
昨日、そう思って眠りについたからだろうか。
今回の記憶は、月守風香に関係する情報を多く含んでいた。
彼女は私の思った通り、友達の少ない生徒だったようだ。
先生にまで心配をかけるほどに。
月守風香は、強いフリが上手な、弱い女の子だった。
シロちゃんが登場したのは少しの間だけだった。
傘をささずに、レインコートを着ていた。
今ならその理由もわかる。
そして、もう一つわかったことがある。
羽酉先生は、本当に私を心配してくれていた。
黒猫となって、嶺明高校を縄張りにしながら。
ちよことチョコ。
チョコと呼ばれて反応したのは、前世の記憶が残っていたからではないか。
それに、高いところが苦手という共通点もある。
偶然とは思えない一致だ。
ノートに、よみがえった記憶の内容を書き込む。
この作業も、もしかするとこれで最後になるかもしれない。