「ごめんね。お待たせ」
昇降口で待つシロちゃんに声をかける。
「羽酉先生に何言われたの?」
「もっと友達と話せ、みたいな感じ。余計なお世話」
大げさにため息をつく。
「風香のことを心配してるんでしょ?」
「わたしはシロちゃんさえいれば他には何も要らないの」
「僕だってそうだけど、先生の気持ちもわからなくもないかな」
そんな、恥ずかしい台詞の応酬を堂々と交わしながら、昇降口を出る。
外は雨が降っていた。二人してレインコートを羽織る。
「シロちゃんは羽酉の肩を持つの? あんなのどうせ、教師として務めをしっかり果たす私、偉い、みたいに自分に酔ってるだけじゃない」
「こらこら、先生のことを呼び捨てにしない。たしかに、そういう先生もいるけど、羽酉先生は違うと思うよ。あの人は、ちゃんと生徒のことを考えてると思う」
シロちゃんがそう言うのなら、そうなのかな。
まあ、だからといって、羽酉先生の言うとおりにはできないけど。
本当はわたしだって、友達と話したり遊んだりしたい気持ちはある。
でも、それ以上に、人とかかわることが怖いのだ。
仲良くなって裏切られるなら、最初から友達なんていなければいい。
必要以上に他人と仲良くならなければ、傷つかずにいれる。
裏切るとか裏切らないとか、そういうことだけが人間関係じゃないことくらいわかっている……。
頭では理解していても、なかなか一歩が踏み出せないのだ。