さて、藍梨に電話しよう。
 燈麻くんのおかげで、体のいい口実ができた。

 呼び出し音が三回ほど鳴って、つながった。

〈もしも~し。どうした琴葉~?〉

 明るい藍梨の声は、いつだって私を元気づけてくれる。

「今大丈夫?」

〈大丈夫だよ。ちょっとセーブするから待っててね……っと。はい、オッケーよ〉

 どうやらゲームをしていたらしい。

〈例の前世の彼氏のこと?〉

「うん。可能性のある四人に話を聞いたんだけど――」

 誰がシロちゃんの生まれ変わりなのか、全くわからないことを伝えた。
 そして、その聞き込みを通して、私が感じたありのままを話した。

 戸惑いや不安、劣等感などが入り混じった、要領を得ないごちゃごちゃした話を、藍梨はたまにあいづちを打ちながら聞いてくれた。

〈琴葉はさ、努力家じゃん〉

 それが、私の話を聞き終えた藍梨の第一声だった。

「そんな、努力家なんて……。周りより劣ってるから、みんなよりも頑張らなきゃいけないだけで――」

〈そう思ってても、本当に努力できる人って、そんなにいないよ。それだけですごいんだって。将来のことなんて、何がどうなるかわからないんだから。夢を持っていようがいまいが、将来のビジョンがあろうがなかろうが、嫌なことや難しいことにぶち当たるときは必ず来るの。そんなときに、琴葉はそれを乗り越える強さを持ってるんだよ〉

「私が、強い?」

〈うん。……って、先輩でもなんでもない私が言うのもちょっと変だけど、この前読んだ漫画に描いてあったことだから多分間違いないよ〉

「漫画かいっ!」

 私は笑った。電話越しに藍梨の笑い声も聞こえた。
 気持ちが少し楽になった。