猫に怯えて逃げてきたシロちゃんの記憶。
中学三年生の夏だった。
クラスの女子が教室に連れてきた猫を怖がって、シロちゃんは風香の席の近くまで避難した。
この記憶を元に、私と弓槻くんはシロちゃんの生まれ変わりを割り出そうとした。
シロちゃんの生まれ変わり候補の生徒から、猫に対する苦手意識の有無を聞き出した。
候補者全員に対して話を聞くことはできたものの、それだけでは絞れずに、現在調査は行き詰まってしまっている。
猫に対する苦手意識の有無だけでは、どうにもならない。
着眼点を変えないと、この先に進むことはできない。
それに、シロちゃんが怯えていたのは、猫のせいではない可能性すらある。
私はこの記憶に関して、一点だけ違和感を抱いていた。
クラスメイトの女子が猫の前足を持って喋っていたときに、シロちゃんは風香の元へ逃げてきたわけだけど、このタイミングには何か意味があるのだろうか、ということだ。
女子生徒が猫を抱いて教室に入って来てからしばらくの間、シロちゃんは猫のそばにいた。
猫が苦手だったら、もっと早くにその場を離れるのが普通ではないか。
考えても仕方がないような気もするけど、どうしても引っかかる。