結局、検査は問題なく終わり、家に帰れることになった。
医者には、しっかり食べて早く寝ることを命じられた。
帰りのタクシーの車内では、母が隣にいたにもかかわらず、沈黙が流れる。
帰宅後は、母の作った料理をたくさん食べた。豚肉のしょうが焼きは、母の得意料理であると同時に、私の大好物である。しかし、落ち着いて食事を楽しむことはできなかった。
もちろん、トラックの事故の件もある。だがそれ以上に、謎の記憶がよみがえってきたことに動揺していたのだ。
夕食のあとはお説教。
徹夜で勉強して寝不足だったことを伝えると「成績なんてちょっとくらい悪くてもいいから、自分の身体を大事にして」と言われてしまった。
たかが転んだだけで大袈裟だという気もしたけれど、一歩間違っていれば命を失っていたのだ。気を付けなければならない。
それよりも、母に悲しそうな顔をさせてしまったことに、申し訳なさを感じる。
ちなみに、急ブレーキをかけたにもかかわらず、地面に倒れて動かなくなった私に驚いたトラックの運転手が、救急車を呼んでくれたらしい。
母が電話番号を聞いていたようで、私は電話越しに頭を下げながら謝り倒した。トラックの運転手のお兄さんは「無事で良かった」と言ってくれた。いい人でよかった。
ひと段落ついて、シャワーを浴びた。擦りむいた両膝の傷に、お湯がしみて痛かった。
「今日はすぐに寝なさい」
お風呂から上がった私に、母が強く言い放つ。
これには私も素直に従わざるを得ない。