それからしばらくして、風香はシロちゃんへ告白する。
二人は三年生になって、同じクラスになった。
春の温かい夕日が差し込む、他に誰もいない放課後の教室。
そんな静かな教室で二人。柔らかな春風がカーテンを揺らす音も、シロちゃんが先の丸い鉛筆で綺麗な数式を書く音も、私が消しゴムでノートを擦る小さな音すらも、はっきりと聞こえた。
使い古された表現だけど、この世界に二人だけしか存在していないような感覚だった。
風香はシロちゃんに、唐突に想いを伝える。計画性もムードも何もない。
でも、互いに想い合う二人には、そんなものは必要なかった。
シロちゃんも同じ想いだと知って、風香はとても喜んでいた。
それから一年も経たないうちに、事故で死んでしまうなんて知らずに。
気持ちを伝え合った月守風香とシロちゃんは、その日から晴れて恋人同士となった。
このときに、両親が離婚しそうだということをシロちゃんから告げられる。
シロちゃんは、それが自分自身のせいだと言っていた。さらに月守風香も、その意味をわかっていたようだ。
シロちゃんにはまだ、私の知らない何かが隠されている。