「そもそも、シロちゃんが猫に対して苦手意識があるという前提が間違っているのかもしれないな」

 唐突に弓槻くんが呟いた。

「え?」

「いや、シロちゃんが猫を避けた理由について、他の可能性も考えてみたんだ。そこで、猫アレルギーだった可能性もあり得ると思った。アレルギーは生まれ変わっても引き継がれないのかもしれない」

「じゃあ、また振り出しに戻るの?」

 言ってから、少しとげを含んだ声音になってしまったかもしれないと後悔が押し寄せる。

 弓槻くんだって、私を困らせようとして言っているわけではないのに。
 私は、なんて勝手な人間なのだろう。

「シロちゃんは猫が苦手だったという前提が間違っていれば、そうなるな。別に今までの調査が無意味だったとは思わないが。とにかく、手詰まりなのはたしかだ。また新しい方法を考えなければならない。俺は部室に戻って、過去の資料をいくつか当たってみる」

「……私も、帰って色々考えてみる」

 顔を上げずにそう言った。
 自分自身の身勝手さに呆れて、彼の目を見ることができないでいる。

 弓槻くんが何一つ文句を言わないことも手伝って、恥ずかしさは膨らむばかりだ。