「昼食でも食べながら話をしよう」
弓槻くんが言った。
どうやら、だいぶ立ち直ったようだ。
「うん」
「学食でいいか?」
「大丈夫だよ」
私たちは学食へと向かった。
終業式だけあって、生徒は少ない。
私はチキン南蛮定食を、弓槻くんは生姜焼き定食を注文する。
突然の死別あとで、まともに食事ができるかどうか心配だったけど、少し時間を置いたおかげか、どうにか大丈夫だった。
「生姜焼きはさすがに箸の方が食べやすいと思うよ?」
「俺を誰だと思っている。巷ではスプーン使いの弓槻と呼ばれて恐れられている男だぞ」
「冗談でしょ?」
「ああ」
この人は、私を馬鹿にしているのだろうか。
いや、きっとわざと明るくしようと努めているんだ。
つらい気持ちに蓋をして、もう大丈夫だと私に伝えようとしている。
私の隣の席の男子は、とても優しい。
だけど、他人に気を遣うのが下手くそだ。