「……チョコが、帰って来た」

 弓槻くんが、ポツリと呟いた。

 それでさっき、猫の話はする必要がなくなったなんて言っていたのか。

「チョコが⁉ よかったじゃない」

 嬉しいニュースのはずなのに、弓槻くんの顔は悲しげだ。

 ――猫は死ぬ前に姿を消すそうじゃないか。

 彼が昨日言った台詞を思い出す。まさか……。

「……冷たくなっていた」

「そんな……」

 私は言葉を失った。

「俺が部室に来たときにはもう、いつもの場所で亡くなっていた。今は空いていた段ボールの中に寝かせてある。これから埋葬してやろうと思う。君も手伝ってくれるか?」

 チョコとは一度しか会っていないけれど、断る理由など何一つなかった。

「もちろん」

 チョコの亡骸が入った段ボール箱を抱えた弓槻くんと、二人で中庭に出る。

 オカルト研究同好会の部室の前にお墓を作ることにした。

 部室にはちょうど、シャベルが何本かあったため、弓槻くんと私は一本ずつそれを手にする。