「父親が優秀な外科医で、その跡を継ぐ予定らしい。母親や親戚からも期待されている」

 それで、彼の成績が優秀であることにも合点がいった。

「へぇ」

 あんなに勉強にこだわるのも、それなりの理由があるんだな。

「すごいやつだよ。俺だったらとっくに潰れてる」

 たしかにその通りだ。医者を目指しているからといって、必ずしも成績がいいというわけではない。努力しなければ、良い成績をキープするなんてことはできないのだ。

 そういえば、伊凪洸の父親が、榮槇先生と知り合いなんだっけ。外科医師である人間と、どういう関係なのだろう。

 すぐに思い浮かんだのが、医者と患者の関係だ。大きな怪我でもしたことがあるのだろうか。

 榮槇先生に助けられたことをまた思い出す。

「どうした、何か問題でもあったのか?」

 弓槻くんに指摘される。
 顔に出てしまっていたらしい。気を付けなければ。

「や、何でもないよ」

「そうか。あいつがシロちゃんの生まれ変わりだった場合、かなり手強いぞ。見ての通り、多忙なやつだからな。そのうえ、君との相性も悪そうだ」

 すでに相性の悪さを見抜かれている。

 それにしても、今日の弓槻くんはどこか元気がないように見える。
 いや、元気がないのはいつも通りなんだけど、落ち込んでいるような雰囲気を感じるのだ。